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金融機関イベントから紐解く2025年金融機関のトレンド・最新動向

  • 執筆者の写真: サイカ
    サイカ
  • 3 日前
  • 読了時間: 11分
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近年、日本の金融業界を取り巻く環境は、生成AIの急速な高度化、自律型AIエージェントの実用化、データ利活用基盤の成熟、そして顧客行動・価値観の多様化を背景に、大きな転換期を迎えています。特に2026年に向けては、「金融DX」が単なる業務効率化やデジタル化の延長線ではなく、企業のエンゲージメントや成功体制を高め、競争優位性の確立や顧客体験(CX)の質を左右する経営レベルの重要課題として位置づけられつつあります。

こうした環境変化の中で、金融機関には、生成AIを活用した業務・意思決定の高度化、データを起点とした顧客理解の深化、さらにはチャネル横断での一貫した顧客体験の設計など、より実践的かつ持続的なDX推進が求められています。一方で、調査レポートが示すように、データ活用の属人化、AI活用の目的不在、現場定着の難しさといった課題も依然として顕在化しています。

当社では、年間約20本の金融機関参加型・協賛イベントを開催しており、各テーマごとに金融機関のキーマンが集い、現場で直面している課題や具体的な取り組み事例、今後の展望について、実践的な議論が行われています。これらのイベントは、単なる情報共有の場にとどまらず、金融DXの“構想”から“実装・定着”へと進むための示唆を得る場として、多くの参加者に活用されています。

本記事では、2025年開催金融機関イベントを通じて得られた最新のアンケート結果をもとに、金融機関が2026年に向けて直面する主要トレンドやニーズ・課題を整理し、今後注目すべき取り組みの方向性を解説します。本記事が、金融DXの次のステージを見据えた具体的な視点や、実務に活かせるヒントを得る一助となれば幸いです。

 

【サマリー】2025年の金融機関の興味関心上位3つ

アンケート調査の結果、2025年に金融機関の方々から興味関心の高かったテーマは、「生成AIによる変革」「データ利活用の高度化」「顧客体験(CX)の再定義」の3点に集約されることが分かりました。

アンケートでは、「関心のあるテーマは何ですか?」といった設問に対し、複数回答式で回答いただいています。

順位

興味のあるテーマ

注目される理由・背景

1位

生成AI/AI活用

生産性向上、コスト削減から「自律型AIエージェント」による知的業務の代替へ。

2位

データ利活用・分析

AI活用を前提とした統合データ基盤とガバナンスを整備し、AIが即時に判断・実行できる環境構築が競争力の鍵へ

3位

UI/UX/CX(顧客体験)

金融DXが“何を作るか”から、“どんな体験を提供するか”のフェーズへ

引用:金融機関関係者アンケート結果(ランキング算出元)株式会社セミナーインフォ 開催報告書(2025年1月-11月分)より

 


【1位】生成AI/AI活用:業務効率化から「自律型エージェント」へ


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2025年の金融業界におけるAIエージェントの潮流は、従来の受動的な対話型チャットボットから、複数の業務を自律的に判断・実行する「自律型エージェント(Agentic AI)」への本格的な転換が進んでいます。メガバンクを中心に、住宅ローン審査や送金、不正検知、顧客オンボーディングなどの高度かつ複雑な業務を、人の介在なしにリアルタイムで完結させる取り組みが加速しています。従来の生成AIが問い合わせ対応や文書生成に留まっていたのに対し、エージェント型AIは意思決定やタスク遂行まで担い、オペレーション効率と顧客体験の同時向上を実現します。

さらに、顧客の資産状況を分析し最適な提案を行う「パーソナルCFO」や、AIが商品選定・契約を代行する「エージェント・コマース」といった新たな価値創出も進展する一方、データ基盤の高度化や透明性・安全性を担保するガバナンス体制の構築が、金融機関の信頼性と競争力を左右する重要課題となっています。

 

主要な最新トピックス


  • 三菱UFJ銀行が「生成AIエージェント」を導入:発話解析で最適なオペレーターへ自動接続 全社導入により圧倒的な生産性向上を実現。2025年12月からは、発話をリアルタイム解析して最適なオペレーターへ繋ぐ「AIエージェント」をコールセンターで稼働させています。

  • 地方銀行20行による「Agentic AI」共同実装 横浜銀行や静岡銀行を含む20の金融機関が、自律的にタスクを遂行する「AIエージェント」の共同検証を開始。2026年3月の本格稼働を目指し、リソースの限られる地銀が「共同戦線」でAI競争力を確保する動きが目立ちます。

  • AIエージェントによるレガシー刷新 シティグループ等では、AIを用いて複雑な旧来システムのクラウド移行を加速。AIが「自ら計画を立て、システムを操作する」段階に達しています。

ソース:

①三菱UFJ銀行:生成AIエージェントによるコールセンターソリューション開始(2025.12.16)

② 地方銀行20行庫:生成AI実装拡大に向けた共同研究会(2025.08.01)

③欧州における汎用AI(GPAI)規制の施行(2025.12.9)



アンケートコメントから見る関心と課題

 

金融機関の担当者からは、AI導入による具体的な効果だけでなく、その裏側にある技術的・組織的な課題への関心が高いことがうかがえます。

• 「具体的なAIの機能上の課題とそこへの対応について伺いたかったです。とくにハルシネーションへの対応について。」

• 「点(個別プロジェクト)の開発をそれぞれの部門で行なっていくと、線、面にした時に差分性が取れないという不安があるので、CDO直轄組織で統括して推進してくのは重要と感じた。」

現場の課題: 「ハルシネーション(嘘をつく現象)」への対策や、部門ごとの個別最適化(点の開発)を防ぐための「CDO直轄組織による統制」が急務となっています。

 

 

【2位】AI活用を前提とした統合データ基盤とガバナンスを整備し、AIが即時に判断・実行できる環境構築が競争力の鍵へ


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2025年の金融業界におけるデータ利活用は、AI活用の高度化を前提としたデータ分析・データマネジメント基盤の再設計が大きな潮流となっています。

多くの金融機関では、レガシーシステムに分断されたデータを統合するため、クラウド上のデータレイク/データウェアハウスに加え、データファブリックやデータメッシュといった分散型アーキテクチャへの移行が進展しています。


これにより、リアルタイムでのリスクモニタリングや不正検知、顧客体験とエンゲージメントを高める行動分析が可能となり、AIによる即時意思決定の土台が整いつつあります。

分析面では、AI・機械学習や生成AIと連携した自律型エージェントが、予測分析や異常検知、超個別化提案を自動実行する段階に到達しています。


一方、マネジメント面では、データ品質・メタデータ管理をAIが自動監視する「自律型ガバナンス」や、国内規制に配慮したデータ主権確保の重要性が高まっています。統合データ基盤、厳格なデータガバナンス、高度分析を三位一体で整備し、「AI-Ready」なデータ環境を構築できるかが、金融機関の競争力を左右する重要な分岐点となっています。


 

主要な最新トピックス

  • 異業種とのデータ統合 みずほFGは、ソフトバンクがOpenAI社と共同開発を進める、個々の企業のシステム・データを統合し企業ごとにカスタマイズされた最先端AI「Cristal intelligence」を、金融業界で初めて導入する予定。先端AI技術等を最適に活用することで、「最高の顧客体験」「オペレーショナルエクセレンス」の実現と、2030年度までに、2024年度対比で3,000億円程度の効果発現を目指します。


  • データインテリジェンスプラットフォームとの連携による、生成AIを活用したデータ分析の効率化


    三菱UFJ銀行は中期経営計画の一環として、データドリブン経営の実現、生産性向上、顧客価値向上を目指し、AI活用能力とデータ基盤の強化に取り組んでいます。散在するデータ資産の統合、AIモデル開発の基盤化、分析・自動化の強化をし、これにより不正検知やマーケティング分析などへのAI活用を加速させています。



  • 生成 AI 検証プロジェクトの手段として社内のあらゆるデータを収集するデータ連携基盤 セブン銀行は社内の各データソースを統合するデータ連携基盤を構築し、生成AIの検証プロジェクト基盤として活用しています。これによりデータ統合とAI分析基盤の全社浸透を目指す取り組みが進んでいます。


ソース:

①みずほFGとソフトバンク、AGI時代を見据えたAI領域における戦略的包括提携契約を締結(2025.07.18) URL:https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2025/20250718_01/

②三菱UFJ銀行、次世代データ・AIプラットフォームとしてDatabricksを採用(2025.04.25)

③セブン銀行がデータ連携基盤・生成 AI 活用環境の実装に「HULFT Square」を導入(2025.04.24) URL:https://www.saison-technology.com/company/news/topics20250424_sej

 

 

 

アンケートコメントから見る関心と課題

• 「生成AI活用のオモテ側を教えてもらった。データのクレンジングなどウラ側も知りたいと思った。」

• 「技術的な課題がもう少し手触り感ある形でおしえて欲しかったです。RAGの難しさ、データ整備、AIagentを活用するうえでの課題など」

現場の課題: AIという「花」を咲かせるための「土壌(データクレンジング・整備)」への投資、およびRAG(検索拡張生成)の技術的難易度の克服に関心が集まっています。

 

 

【3位】金融DXが“何を作るか”から、“どんな体験を提供するか”のフェーズへ

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金融DXはこれまでの「何を作るか」「どの業務を効率化するか」という発想から、「顧客にどんな体験を提供するか」を起点とするフェーズへと移行しています。金融サービスが高度にデジタル化・均質化する中で、UI/UXやCXは差別化の中核となりつつあります。近年は、顧客行動データやVoCを活用し、顧客の状況や意図に応じて最適なタイミング・チャネル・表現で接点を設計する動きが加速しています。 特に、アプリやWebにおける直感的な操作性、手続きの簡素化、心理的負荷を抑えた導線設計に加え、生成AIを活用したパーソナライズ対応やサポート体験の高度化が注目されています。金融DXにおいてUI/UX・CXは、単なる業務改善を超えて、顧客体験を中心とした関係性を再設計し、企業の成長や成功を実現するための戦略的コンサルティング領域として位置づけられています。

主要な最新トピックス

  • デジタルとリアルを融合した顧客体験

SMBCが手掛けるOlive LOUNGEは、デジタル中心のOlive戦略をリアル体験と結びつけるフィジタル施策として展開されています。金融取引に加え、スターバックスやシェアラウンジを併設し、滞在や交流の場としての価値を提供。渋谷を皮切りに生活動線上へ展開し、営業時間も拡大することで、若年層を含む新たな顧客接点を創出。店舗での決済体験を通じ、アプリ利用と認知向上を促進しています。

  • フリクションレスな顧客体験の入り口としてのアプリCXの改善

三菱UFJ銀行のアプリの改善は、デジタル体験を起点に顧客との関係性を継続的に深め、日常的に使われる金融サービスを実現することを目的としています。直感的で分かりやすいUI/UXとグループ連携を強化しています。

  • パスキー(FIDO2)による脱パスワード


    GMOあおぞらネット銀行やSBI証券は、生体認証とデバイスバインディングを組み合わせた「パスキー」を導入。フィッシング詐欺を物理的に防ぎつつ、スムーズなログイン体験を提供しています。



ソース:

①銀行・カフェ・オフィスが一体になった新店舗 新宿エリア初出店となる「Olive LOUNGE 新宿通」が12月8日オープン(2025.11.20)

②三菱UFJ銀行:モバイルアプリの大幅リニューアル(2025.06.02) URL:https://note.com/japan_d2/n/n6a7a6cfdf05c

①GMOあおぞらネット銀行:パスキーと顔認証による本人確認(2025.10.30) URL:https://gmo-aozora.com/news/2025/20251030-01.html


アンケートコメントから見る関心と課題

金融機関の参加者からは、UI/UXを阻害する内部要因への危機感と、高齢者や障害者への対応という社会的な課題が表明されています。


• 「企業起点ではなくお客様起点でUI/UXを提供するという考え方が勉強になりました。どうしても企業側起点となってしまう発想を転換しないといけないなと感じました。」

• 「自己満足にならず顧客の声を聴くこと、および、開発者の意識を変えることが重要だというのは十分理解できました。(ただ、それが難しい、と日々感じています)」

• 「障害や高齢のために金融サービスへのアクセスが従来は難しいかたのためのUI, UXについてさらに掘り下げて伺いたい。」


現場の課題: 企業起点の発想から脱却し、いかに「真の顧客起点」で開発者の意識を変えられるか。特にアクセシビリティ(高齢者・障がい者対応)の深掘りが求められています。

 

結論:2026年に向けた金融DXの「実装」と「定着」


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2025年のアンケート調査から明らかになったのは、日本の金融機関が単なるデジタル化の段階を終え、生成AIを実地業務に組み込む「実装」のフェーズへ、そして組織全体に根付かせる「定着」のフェーズへと完全に移行したことです。


1位の生成AI/AI活用に見られるように、自律型エージェント(Agentic AI)への進化は、単なるコスト削減を超えた「知的業務の代替」を可能にしつつあります。しかし、それを支えるのは2位のデータ利活用、すなわち「AI-Readyなデータ基盤」の整備に他なりません。そして、これらすべてのテクノロジーは、3位の顧客体験(CX)を再定義し、顧客との信頼関係を深めるために集約されるべきものです。


2026年に向けて、金融機関には「技術をどう導入するか」ではなく、「技術をどう顧客価値と信頼に変換するか」という、より本質的な経営判断が求められています。



おわりに:金融DXの次なるステージへ

 

当社が開催するイベントでは、今後も「生成AIの社会実装」「データドリブン経営の高度化」「CXによる差別化戦略」といった、金融機関が直面するリアルな課題を深く掘り下げてまいります。



本記事でご紹介した最新トレンドや事例が、貴社における金融機関へのプロモーションの具体的なヒントとなれば幸いです。

2026年を見据えた次なる戦略について、より詳細な議論や事例共有が必要な際は、ぜひ当社のセミナー・イベントをご活用ください。






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<執筆者>サイカ

2019年証券会社に新卒で入社後、個人向け・法人向け営業を担当。2021年セミナーインフォに入社後は金融機関向けセミナー担当として保険業界・リスク管理領域の企画を年間80本程担当、その後金融業界向けメディアTheFinanceのSEO対策・メディアの企画運営を担当し、現在は金融機関向け中規模イベント・ビジネスフォーラムの企画に従事。



 

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