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中期経営計画とは?2025年に新中期経営計画を発表した銀行を紹介!

更新日:5月23日



2025年には、多くの銀行が新たな中期経営計画を発表しました。

本記事では「中期経営計画とは何か?」基礎からわかりやすく解説し、策定の流れ、そして2025年に発表された主要な銀行の計画内容を詳しく解説します。




中期経営計画とは?


中期経営計画とは、企業が3年から5年程度の中期的な期間を見据えて、中長期的な目標や戦略を明示する計画書のことを指します。


この計画では、企業の成長方針や事業の方向性を定め、社内外のステークホルダー、すなわち従業員、株主、投資家、取引先などに共有するための重要なツールとなっています。


策定自体は法令で義務付けられているものではありませんが、特に上場企業を中心に、経営の透明性を高め、企業価値の最大化に向けて積極的に活用されています。中期経営計画を通じて、企業は将来的なビジョンと目標を示すだけでなく、その達成に向けた具体的な施策や数値目標、経営資源の配分方針も明らかにします。


近年の経営環境は、不確実性や変化のスピードが増しており、中期的な視点で成長戦略やリスク対策を描くことの重要性がより高まっています。したがって、多くの企業が中期経営計画を見直し、社会的課題への対応や新たな成長領域への投資強化といったテーマも盛り込まれるようになっています。


主な構成要素

中期経営計画には、一般的に以下の要素が含まれます。

  • 経営ビジョンと基本方針:企業が目指す姿や基本的な方向性を示します

  • 事業環境分析:市場動向や競合状況、自社の強み弱みなどを分析します

  • 数値目標:売上高、利益、ROE(株主資本利益率)などの財務指標の目標値を設定します

  • 戦略的施策:目標達成のための具体的な施策や投資計画を明示します

  • リスク要因とその対策:計画実現の障害となりうる要素とその対応策を検討します

 

中期経営計画の策定と設定の流れ


中期経営計画は、銀行や金融機関にとって経営の羅針盤となる重要な計画です。その策定には一般的に以下のようなプロセスが取られます。


1.現状分析と環境認識

まず、自社の現状を客観的に分析することから始まります。SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)などのフレームワークを活用し、銀行の内部環境と外部環境を多角的に評価します。


金融機関の場合、以下のような観点からの分析が重要です。

  • 財務状況(収益性、資産の質、自己資本比率など)

  • 顧客基盤と市場シェア

  • 商品・サービスの競争力

  • 人材の質と量

  • デジタル化の進展度合い

  • 規制環境の変化とその影響

 

2.経営理念・ビジョンの再確認

次に、銀行の経営理念やビジョンを再確認します。

「私たちは何のために存在するのか」「どのような価値を社会に提供するのか」という根本的な問いに立ち返ることで、中期経営計画の方向性が定まります。

近年は特に、社会的価値と経済的価値の両立を意識したビジョン設定が重視されています。


3. 基本方針と重点戦略の策定

ビジョンを実現するための基本方針と、特に注力すべき重点戦略を定めます。

一般的な金融機関では、以下のような戦略領域が設定されることが多いです。

  • リテール戦略(個人顧客向け)

  • 法人戦略(企業顧客向け)

  • 市場運用戦略

  • デジタル戦略

  • 人材戦略

  • リスク管理戦略

  • サステナビリティ戦略

 

4. 数値目標の設定

基本方針と戦略に基づき、具体的な数値目標を設定します。

銀行の中期経営計画では、以下のような指標が一般的に用いられます。

指標カテゴリ

指標

収益性指標

当期純利益、ROE(自己資本利益率)、ROA(総資産利益率)

効率性指標

OHR(経費率)、CIR(コストインカムレシオ)

健全性指標

自己資本比率、不良債権比率

成長性指標

貸出金残高、預金残高、顧客数の増加率

非財務指標

顧客満足度、従業員エンゲージメント、CO2排出量削減率

これらの指標について、計画期間の最終年度における目標値と、可能であれば各年度の中間目標も設定します。

 

5. アクションプランの策定

目標達成のための具体的なアクションプランを部門ごとに策定します。

ここでは「いつまでに」「誰が」「何を」「どのように」行うかを明確にし、実行可能性の高い計画とすることが重要です。また、投資計画や要員計画などのリソース配分も同時に検討します。


6. モニタリング体制の構築

計画の進捗を定期的に確認し、必要に応じて軌道修正を行うためのモニタリング体制を構築します。

KPI(重要業績評価指標)を設定し、経営会議や取締役会などで定期的に進捗を確認する仕組みを整えます。

 

2025年に発表された主な中期経営計画


株式会社コンコルディア・フィナンシャルグループの中期経営計画

コンコルディア・フィナンシャルグループは、2025年度から2027年度までの3年間を計画期間とする新たな中期経営計画を発表しました。


この計画は「未来への飛躍につなげる3年間」と位置づけられています。

主要テーマは「Growth-成長-」「Empowerment-強化-」「Sustainability-持続性-」の3点です。


戦略的重点としては、ソリューションビジネスの深化・拡大、戦略的投資・提携、人財投資、生産性向上、地域成長への貢献、グループガバナンスの高度化が挙げられており、金利変動や人口動態の変化といった環境変化を認識している点が注目されます。


2027年度の財務目標は以下の通りです。

項目

数値

ROE(東証基準)

9.0%超

親会社株主に帰属する当期純利益

1,200億円超

普通株式等Tier1比率(バーゼルIII最終化完全実施ベース、その他有価証券評価差額金除く)

11%程度

 

コンコルディアFGは、成長、内部強化、長期的な持続可能性というバランスの取れたアプローチを強調しており、変化する経済・社会情勢に直接的に対応しようとしていることがうかがえます。


特に、中期経営計画の資料において「金融政策の転換による金利変動や経済情勢の変化など、不確実性が高まっています」と明記されていることは、新たな金融政策時代への積極的な対応姿勢を示しています。


参照:コンコルディアフィナンシャルグループ「中期経営計画」


株式会社ふくおかフィナンシャルグループの中期経営計画


ふくおかフィナンシャルグループは、2025年4月から2028年3月までの3年間を計画期間とする第8次中期経営計画を発表しました。これは、2022年度から2024年度(2025年3月終了)の第7次中期経営計画に続くものです。


主要テーマは「既存ビジネスの持続的な成長と新たな価値の共創に向けての成長基盤を構築する3年間」であり、地域の「真のゆたかさ」の実現を目指しています。


戦略的重点は、コアビジネスの進化、次期成長ドライバーへの投資、事業領域の拡大を設定しています。

地域の重要課題として、産業振興、人生100年時代への対応、デジタル社会への対応、気候変動への対応を挙げており、九州域外での事業機会を捉え、そのノウハウや収益を九州に還元し、戦略的M&Aも視野に入れる方針です。


2027年度の財務目標は以下の通りです。

指標

ROE

9%程度

連結当期純利益

1,000億円

自己資本比率

10%台 

 

第8次中期経営計画は、第7次中期経営計画からの明確な進展を示しており、ROE目標が引き上げられています。


第7次中期経営計画 ではROE6%を目標とし、第8次中期経営計画では、2027年度のROE目標を「9%程度」と設定しています。

このように中期経営計画を通じてROE目標を上方修正していることは、株主還元と資本効率の改善に対する一貫した、そしてますます強まる意欲の表れであることがわかります。


「九州域外のビジネス機会を積極的に捉え、そこから得たノウハウ・収益を九州に還元」という明確な戦略は、単に内向きではない、洗練された地域戦略を示唆しており、一地域の経済の潜在的な限界を克服するための積極的なアプローチであることがわかります。

 

参照:

ふくおかフィナンシャルグループ「第7次中期経営計画」

ふくおかフィナンシャルグループ「第8次中期経営計画」


株式会社めぶきフィナンシャルグループの中期経営計画

めぶきフィナンシャルグループは、2025年度から2027年度(2025年4月~2028年3月)までの3年間を計画期間とする第4次グループ中期経営計画を発表しました。


これは長期ビジョン2030「地域とともにあゆむ価値創造グループ」実現に向けた第2フェーズであり、「持続的成長に向け、進化を加速する期間」と位置づけられています。


主要テーマは、マテリアリティ(地域産業の成長、生活の質の向上、脱炭素化、顧客サービス、強固な経営基盤)と基本戦略の統合であり、社会的価値と経済的価値の双方の創造を目指すとされています。


戦略的重点は、社会課題解決戦略、事業ポートフォリオ戦略(収益性とリスクバランスの高い分野への資源シフト、コンサルティング)、経営基盤強化であり、グループ一体での取り組みによる顧客サービスにより得られる手数料収入の拡大、金融正常化に伴う適切なアセットアロケーション、生産性の更なる向上を目指していく方針です。


2027年度の財務目標は以下の通りです。 

項目

数値

連結ROE(純資産ベース)

9.0%以上

親会社株主に帰属する当期純利益

900億円以上

 

めぶきFGは、中期経営計画を長期ビジョンおよびサステナビリティ(マテリアリティ)と明確に連携させています。

「金融正常化に伴う利益成長に向けた適切なアセットアロケーション」への注力は、変化する金利環境を最大限に活用する明確な戦略を示しています。

この方針は、長期にわたる低金利環境からの大きな転換点において、金利上昇から利益を得るための戦略的転換を示唆しており、同計画はまた、「地域・お客さまの課題解決に向けたグループ一体となった取り組み推進による対顧役務利益の増強」も目指しています。


参照:めぶきフィナンシャルグループ「第4次グループ中期経営計画」


2025年に発表された3行の中期経営計画共通重要施策


分野

FFG

コンコルディアFG

めぶきFG

デジタルトランスフォーメーション(DX)およびAI活用

デジタル/AIによる顧客理解深化やBaaS提供を推進

AIによる生産性向上を目指す

戦略的なDX投資を計画

ESG/サステナビリティおよび地域貢献

気候変動や地域産業を含むマテリアリティと「真のゆたかさ」の実現を目指す

サステナビリティテーマと地域成長を掲げる

脱炭素化、地域産業、社会的インパクト指標を含むマテリアリティを重視

顧客ソリューションおよびフィー収益強化

「ソリューション力」、M&A、コンサルティングを強化

「ソリューションビジネス」を推進

「対顧役務利益増強」とフィー収益比率50%以上を目指す

人的資本開発

戦略的人材ポートフォリオを構築

ソリューション人財や営業力強化に注力

人的資本投資を計画

インオーガニック成長/M&A

新たな価値創造や収益獲得のためにM&Aを推進

戦略的投資やM&Aを検討


これらの共通戦略テーマ(DX、ESG、ソリューション、人的資本)は、人口動態の逆風、歴史的な低金利、変化する顧客期待といった共通の課題に直面する日本の地方銀行が、その価値提案を再定義しようとする「地方銀行再創造の戦略書」とも言えるものの出現を示唆しています。


また、ESGは社会的責任であると同時に、FFGのGXビジネス参入 やめぶきFGの脱炭素化支援 、コンコルディアFGのサステナブルファイナンス拡大 に見られるように、事業成長の推進力としても捉えられています。


まとめ:金融機関の中期経営計画を読み解く



中期経営計画は、銀行をはじめとする金融機関が3〜5年先を見据えて策定する「経営の羅針盤」です。単なるビジョンの提示にとどまらず、数値目標や施策、リスク対応策を含む実行計画であり、近年ではESG・DX・人的資本・地域戦略なども包括的に盛り込まれています。


多くの金融機関にとって、中期経営計画は「課題の棚卸」と「ソリューション探索」の出発点となるため、中期経営計画を読み解くことで、IT投資の方向性、重点施策、KPI、外部パートナーに求める役割が浮かび上がります。つまり、中期経営計画は、提案活動における“戦略地図”ともいえる情報です。

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 # 銀行 #中期経営計画



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